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最高裁判所第三小法廷 昭和38年(オ)1174号 判決 1966年6月07日

主文

なし

理由

上告代理人瓜谷篤治の上告理由第一点について。

相互銀行法第四条において大蔵大臣の免許を受けた相互銀行以外の者は同法第二条第一項第一号に規定する業務を営んではならないと定め、同法第二三条において前記規定に違反した者を処罰する旨定めたのは、主として行政取締の必要上免許を得ないで右業務を営むことを禁止し、もつて、右業務を行なう者に対する行政上の監督の適正を期するとともに、これによつて信用の維持と加入者の保護をはかろうとするにあるのであるから、右規定に違反して前記業務に該当する行為がなされた場合においても、右行為自体はこれを無効のものと解すべきではない。よつて、右と同趣旨の原判決は正当であり、所論は独自の見解であつて採用のかぎりではない。なお、所論の判例は、本件と事案を異にし、本件に適切でない。

同第二、三点について。

原審の確定するところによれば、本件掛戻債務の返還については原判示の理由により利息制限法の適用を排除しえないと解すべきところ、本件代物弁済予約完結の意思表示のなされた当時における、上告人の被上告人ら先代に対する本件掛戻残債権は、原判示の本件における事実関係に同法を適用して計算すれば、少くとも金二一一、六〇〇円を下らなかつたというのである。そして、原審の右認定判断は挙示の証拠により是認することができ原判決に所論の違法は存しない。所論は、原判決を正解せず、原審認定にそわない事実を前提として原判決を非難するに帰し、採用できない。

同第四点について。

債務者が期限に弁済しないときは、残債務の弁済にかえ、予め定められた特定物をもつて代物弁済となし得る趣旨の代物弁済予約が成立した後、一部弁済がなされた場合においては、反対の特約、もしくは既払分が相当の額に達し右特定物を残債務の代物弁済に充てることが信義則等に照らし不当と認められるような特段の事由の存しないかぎり、債権者は、前記予約完結権の行使を妨げられるものではなく、ただ右行使後一部弁済として既に受領した金員等を債務者に返還する義務を負担するものと解するのが相当であるところ、原審は、右と同趣旨の見解に立ち、その認定した本件における事実関係のもとにおいては被上告人ら先代のなした本件代物弁済予約完結の意思表示は原判示の理由によつて有効であると判断しているのである。そして、原審の右認定判断は挙示の証拠により是認することができ、原判決に所論の違法は存しない。所論は、原審の右認定にそわない事実を前提とし、独自の見解に基づき原判決を非難するに帰し、採用できない。

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